スティーブ・ジョブズ。Appleの創業者、そしてCEOでもあった人です。
僕が彼を初めて認識したのは、「プレゼンがうまい人」という位置づけだったように思います。14年前初のiPhoneが日本に上陸したとき、製品発表会に登壇し聴衆を魅了するCEOがすごいと話題になっていたのです。僕は当時塾講師の仕事をしていたから、“人前で話すのが上手”という部分で興味を持ったのです。そこからはメディアに出てくるさまざまな情報に触れる中で、なんとなく「iPhoneを発明したすごい人」という人という側面も増えていきました。でもそれは「エジソンってすごい人」という感覚に近い、あまり根拠のないものでした。
でも、僕は本当に「すごい」と、つい先日自ら感じました。きっかけは彼のスピーチ。2005年にスタンフォード大学の卒業式に登壇した際のものです。
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特に衝撃を受けたのが、この言葉にまつわる出来事です。
人生には時に、レンガで頭を打たれるような出来事がある。(でも)信念を失ってはいけません。(Sometimes life hits you in the head with a brick. Don’t lose faith.)
※直訳は「時に、人生はレンガであなたの頭を打ってくる」。無生物主語ってやつですね。
スティーブは30歳の時にAppleを追われます。10年間人生をかけて築き上げてきた会社から突然追い出されるのは、まさに「頭をレンガで打たれる」ような辛さだったようで、数か月呆然としたと言います。しかし彼は、自分の中に熱意が失われていないことに気づくと、「NeXT」という新たな会社を立ち上げ、再びコンピュータの進化に心血を注ぎ始めるのです。その後紆余曲折あって13年後、なんとNeXTは、Appleに買収されることになります。スティーブは奇しくも、自分の創った会社に帰り咲くことになるのです。さらに、iMacという大ヒット製品を世に送りだし、当時経営難に陥っていたAppleの救世主にまでなってしまうのです。
実は私も「レンガで頭を打たれる」ようなことがありました。
学習塾講師という仕事に寝食を忘れて取り組んでいました。天職だと感じ、一生この仕事をしていこうと情熱を注いでいたのですが、キャリア10年目の32歳で過労から大病を患い、仕事を辞めざるを得なくなってしまったのです。その後は生きる気力を失い、引きこもりになり、廃人のような日々を送っていました。私はスティーブのように強くはないからか、再び社会に出るまでに2年半、さらに自分の中に熱意が失われていないことに気付くまでに10年かかりました。
ようやく仕事に、そして生きることに前向きになってきたところに偶然このスピーチと出会ったので、その類似性に衝撃を受けたのでした。
スティーブはスピーチの中で、こうも言っています。
アップルを追われなかったら、間違いなく今の私は無かった。非常に苦い薬でしたが、私にはそういうつらい経験が必要だったのでしょう。(I’m pretty sure none of this would have happened if I hadn’t been fired from Apple.It was awful tasting medicine, but I guess the patient needed it.)
私も、大病を患わなかったら、今の状態はなかったと確信できます。暗闇でもがく12年は時につらく、時にむなしい時間でしたが、今こうして穏やかに幸せを噛み締められるのは、その経験があったからこそです。
世界的に有名なカリスマが、実は名もなき凡人と似たような経験をしていたと知り、にわかに彼に興味が出てきてしまいました。彼のような偉業は成し遂げられないでしょうが、彼の「生き方」をより深く知ることで、私ももっと情熱をもって日々を生きることができるのかもしれません。
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